遙か彼方
…───無理。
気になって読めない。
彼は鼻歌を歌いながら、私の読んでいる本を覗き込んでくる。
歌っている鼻歌も何の曲なのかさっぱり分からない。
とにかく凄く機嫌がいいらしい。
「な、何?」
私は我慢出来ず彼に話し掛けた。
「何が?」
彼は質問を質問で返すのが得意らしい。
「読みづらいんだけど」
「へ?」
「……もういい」
いちいち説明するのが面倒で、私は本をパタンと閉じた。
「どうしたの?」
「葵?」
「何?」
「貴方はどうしてここに来るの?」
本は読めそうにないから止めた。
私は謎だらけのこの青年の謎を解明しようと思う。