遙か彼方



美桜へ

美桜、ごめんなさい。
お母さんはやっぱり
この家には居られません。
お父さんの帰りを
待つことが苦痛でしか
なくなってしまったから。
美桜はもう16歳だから、
お母さんのわがままに
付き合うことは
しなくていいの。
高校、頑張ってね。

お母さんより





…───思考が止まった。


何も分からない。

何も考えたくない。




……暫く動けなかった。


学校へ行く時間はとっくに過ぎていた。



どのくらいそうしていたかはわからない。

どこかへすっ飛んでいた意識が戻ると目からは涙が流れた。

まだ何にも理解出来ていなかったけど、何故だか悲しくなって涙が流れた。


その涙は未だ持ったままのお母さんの手紙に落ちて、字を滲ませる。




お母さんは帰ってこない。

そのことは無意識にも分かったのかもしれない。


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