遙か彼方



「行ってない?」

「どうでもよくなって」

「……そっか」


彼は視線を下げた。



意外な反応だった。

もっと突っ込んで聞かれるのかと思っていた。


そういえば“どうでもよくなった”なんて、初めて他人に話をした。



そんな反応なんだ。

なんだ。

そんなもんか。


少し気が抜けた。

今まで真面目に生きてきた私は、不登校くらいで凄く悪いことをしている気にでもなっていたらしい。


高校に通ってもいない彼からしたら、私なんてそんなものか。



「じゃあ美桜はどうしてここに居るの?」


それは私がしようと思っていた質問。

先を越された。


「ここの学生寮に住んでる」

「どうして?」

「お父さんがここの教授で……」

「うん?」

「寮に住めって……」

「そう」


私きっとまた泣きそうな顔してる。

自分のことを話すのに必ず親が絡んできて、言いたいことも言えない。

もどかしい。






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