遙か彼方
「じゃあ、美桜と明日も明後日も会えるね」
彼は今までの真剣な雰囲気を払拭して言った。
「葵も来る?」
「もちろん」
もう彼がここに来る理由なんてどうでもいいや。
聞いてもきっと答えてくれないし。
私は貴方に明日も明後日も会えると分かったら嬉しくなった。
「明日も私の話を聞いてくれる?」
「もちろん」
私は寂しかった。
話し相手のいない毎日が。
図書館に逃げ込むしかない日々が。
本当は沢山話したい。
誰かに私の話を聞いて貰いたい。
でも佐山さんにも寮母さんにも言えなかった。
寂しいなんて言えなかった。
だけど葵には言える気がする。
「……っ…うっ……」
突然私の目から涙が流れた。
「美桜?どうした?」
その涙を彼の白い指が優しく拭ってくれる。
「ぅっ……」
人前で泣いたのなんていつぶりだろう。
でも恥ずかしさはあまりない。
それは彼が心配そうに見てくるから。
私の涙は拭っても拭っても止まらなかった。