遙か彼方
彼は私が泣き止むまで涙を拭ってくれた。
落ち着いてきて涙も止まった私は未だに私の頬にある彼の両手を掴んだ。
「もう大丈夫」
「目が真っ赤だね」
彼は手をそのままに、意地悪に言う。
今更気付いたけど、顔が近い……。
泣きじゃくって不細工であろう私の顔を間近で見つめられている……。
私は彼の両手を頬から剥がして、ぶんっと投げた。
「おっと。……何?」
体勢を崩して後ろに手を着いた彼は唖然としている。
「な、何でもない」
「美桜?」
彼はまた私顔を覗き込む。
「見るなっ」
そう言って両手で顔を隠すと、ぶはっと笑い声が聞こえた。
指の隙間から覗いて見ると、彼はお腹を抱えて丸くなり肩を揺らしている。
「クックックッ」
「……その遠慮した笑い方止めて」
笑うなら笑えばいいじゃない。
「ごめん、ごめん」
そんなに可笑しかったかな……。
私は両手で隠した頬を密かに膨らませた。