遙か彼方
彼の正体を知った夜
夜8時。
私は図書館へと向かっている。
さっきまで明るかった空も、8時を過ぎれば真っ暗になっていた。
『夜、僕に会いにくるのなら、僕の正体を全て証す。だから美桜、僕の正体を知る覚悟を決めてくるんだよ』
彼はそう言った。
正体………。
それは確かに気になる。
でも覚悟がいることなの?
大袈裟じゃない?
その後、私は彼にこう聞いた。
『もし、私が貴方の正体を受け入れられなかったら、どうする…?』
『………もう二度とここへは来ない』
『それって……』
『美桜とは二度と会わない』
低い声は私の胸に突き刺さる。
もしもの話の筈なのに、ズキンと酷く痛かった。
色んな覚悟をしつつ、図書館の扉の前に到着した。
図書館前の外灯は点いているものの、室内の電気は一つも点いていないように見える。
本当にこの中に彼がいるの?
扉に手を掛ければ、重たい扉が少し開いた。
確かに鍵が開いている……。