遙か彼方



昼までそうしていた。

訳も分からず泣いていた。


学校をサボっても、入学したばかりの私には心配して連絡をくれる友達はいなかった。


それが余計に、私は“独り”なんだと寂しく思わせる。



お母さん、私はわがままだなんて思わない。

何で私を置いていったの……。

こんな広い家に独りなんて寂しすぎる……。





────お母さんが家を出た原因は、手紙にも書いてあるように“お父さん”。



お父さんは医療大学の教授をしている。


研究やら何やらで家に帰ってこないことなんて、珍しくなかった。

いつしか気が付けばお父さんは全く帰って来なくなっていた。


それは私にとっては“いつものこと”で、特に気にしていなかった。

だからお母さんの気持ちにも気付いてあげられなかったのかもしれない。


お母さんは、お父さんが帰ってこないことを気にしていたんだ。

私の前ではそんな素振り見せなかったけど、一人で辛い思いを隠していたのかもしれない。

夜、寝室で泣いていたのかもしれない。



私はそんなことに気付きもせずにいた……。



お母さん…。

ごめんなさい……。







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