遙か彼方
「正体を知られて、僕から逃げてしまってもそれはしょうがないと思ってる」
「……………」
「でも僕は、美桜に本当の僕を知って貰いたい。僕は美桜の支えになってあげたいから」
「……………」
「美桜が昼間泣いたでしょ。こんな秘密ばかりの僕は美桜を抱き締める資格はないって思った。美桜だって僕にすがって泣く気にはならないでしょ。でも僕は美桜にすがってほしい。美桜の支えになりたい」
愛の告白をされたようだった。
顔が熱い。
きっと全身真っ赤に染まっている。
彼は私の為に正体を証してくれる?
嫌われるかもしれないのに?
そんな彼に私は何をしてあげられるんだろう。
「こんなこと言ったらズルいよね……。ごめん今の無し」
「ううん。ズルくなんてない」
「……ありがとう」
彼の声が少し和らいだのが分かってほっとした。
「じゃあ……、いい?」
そう言った彼は、こっちに向き直りカーテンに手を掛ける。
いよいよ彼の正体が分かる。
私は知らず左手を自分の胸の上に置いた。
そうすれば緊張が少し和らぐような気がしたから。
シャーッと高い音を発てて一気にカーテンが開いた───。