遙か彼方
風が雨を室内に運ぶ。
それに気付いた彼は立ち上がって、窓を閉めた。
途端に外の音がしなくなり、窓ガラスに雨が当たる音だけが響く。
座り直した彼が再び話し始めた。
「治療法の研究には何十年もの歳月が必要とされる。25で死んでしまうハルカの人間では時間が足りないんだ。まぁ、その辺は僕もよく分からないんだけど」
「うん」
「地球に生命が居るのは知っていたんだ。だから地球まで行ける宇宙船を造ってたどり着いたのが日本と言うわけ」
「へぇ」
そんな中身のない相槌しか出来ない。
彼が一人で喋っているから、何か質問でも投げ掛けてみようかとは思うけど、全く浮かんでこない。
「研究は引き受けて貰えたんだけど、いくつか条件を出されたんだ。まず宇宙船の設計図を渡すこと。あと僕らの存在を隠すこと」
交換条件だなんて、日本人が考えそうなこと。
無償で引き受けてあげればいいのに。