遙か彼方
取り敢えず、お母さんがどこに行ったのかつきとめたい。
やっと動きだした頭でまず考えたことはそれだった。
─────っと、その前にご飯を食べよう。
行動を開始しようとしたら、急にお腹が空いてきた。
冷えてしまった目の前のご飯は、もしかしたら私が食べる最後のお母さんのご飯かもしれない。
そう思うとやっぱり涙が溢れ出す。
そうか。
そういうことか。
“豚のしょうが焼き”
それは私の好きな料理。
それを知っていてお母さんはこれを作ったんだ。
お母さんの最後の優しさは、私にはとても辛いものだった。
こんな優しさいらない。
だから今すぐ迎えに来て……。
そう何度も願っても、玄関の扉が開くことはなかった。