遙か彼方
そういえば、さっきまで感じていた恐怖感が無くなっている。
話を聞いてる間に彼に慣れたのか。
雨のせいで月明かりすらなくなって、遠くの外灯の灯りのみの暗い室内のせいか。
といっても、ずっと暗い場所に居たから暗闇に目が慣れている。
彼の瞳が金色なことも微かに分かる。
きっと彼の正体が分かったからだと思う。
得体の知れないものは怖い。
お化けとか。
その逆で正体が分かったら怖くない。
彼が宇宙人だって怖くない。
そりゃ宇宙人だということを気にしないのは無理だけど。
彼は、彼だ。
「……怖くない」
「本当に?」
「だから、貴方から逃げたりしない」
「……うん」
「嫌いになんてならない」
「……うん」
俯いたまま『うん』とだけ返事をする彼の声は震えていた。
「葵……」
「うん」
「ありがとう」
「……うん」
私に話してくれてありがとう。
辛い思いをさせてしまってごめんなさい。
私もいつか、もう少し時間が経ったら、貴方に聞いて貰いたい。
私がここに居る理由を。