遙か彼方
佐山さんと買い物
ケータイの着信音で目が覚めた。
家で電源を切っていたケータイは、寮に来てから電源を入れた。
だけど、滅多に鳴らない私のケータイ。
電話をしてくるのはあの人しかいない。
あの人の為に電源を入れたようなもの。
私はベッドに寝たまま枕元のケータイを取り、通話ボタンを押した。
「もしもし…」
『佐山です。朝早くごめんね』
「いいえ」
時計を確認すれば7時を過ぎた辺りだった。
『今日買い物行かない?』
女子か、とツッコミたくなるような誘い方。
「はい」
佐山さんはたまに、月に1、2回程度私を買い物に連れ出してくれる。
どうやら佐山さんは私の世話係らしい。
私は佐山さんに連れ出して貰わない限り外には出ない。
出る気がしない。
お金も無いし……。
買い物に行く時は佐山さんの財布から出してくれるけど、佐山さんが言うには後でお父さんにお金を請求しているらしい。
本当のところはどうだか分からないけど。