遙か彼方
「楽しんできて」
「そうする…」
断られたことが意外とダメージが大きかったらしい。
はぁっと溜め息が出た。
「ごめんね」
「ううん、全然いい。じゃあ行ってきます」
「行ってらっしゃい」
彼に見送られて本棚の角を曲がった。
あ。
言い忘れたことがある。
「葵」
私は本棚の角から顔だけ出した。
「どうしたの?」
「今夜、また来てもいい?」
「いいよ」
それを聞くと満足して私はまた出口に向かって歩きだした。
彼の顔がまた見れる。
もう怖くない。
今日は彼の隣に座りたい気分だ。