遙か彼方
ご飯を綺麗に平らげた後、私は両親の寝室に向かった。
何か手掛かりがあるかもしれない。
ドアを開けると、そこは整然としていた。
パット見はいつもと変わらない寝室。
でもドレッサーの前の化粧品は数が減り、綺麗に整理されていた。
本棚のお母さんのお気に入りの本がなくなっていた。
ベッドの布団がやけに綺麗に敷かれていた。
クローゼットを開くと、案の定中はスカスカだった。
残っているのはお父さんの服と、ここ何年も着ているところを見ていないお母さんの服。
本当に出て行ったんだ……。
信じたくないけど、信じるしかないらしい。
お母さんの匂いがする寝室。
お父さんの匂いのしない寝室。
お父さんの面影を残しながらもお父さんの匂いのしないこの部屋は、お母さんにとってどんな空間何だろう。
私にはわからない。