遙か彼方
「一応俺が知ってることは伝えてあるよ」
佐山さんはどこまで知っているんだろう。
「……お母さん、のことは?」
さっきの刺々しい声が嘘のように、今度は弱く呟くように聞いた。
赤信号で止まると佐山さんが私の様子を伺うように見つめてくる。
「…………」
「…………」
私はそんな視線から逃げるように俯いた。
こんな情けない顔見られたくない。
信号が青に変わると再び車は走り出す。
「悪いとは思ったけど、美桜ちゃん宛の手紙読ませて貰ったよ。後、学校からの電話でケータイが繋がらないってのは聞いてたし、だから状況は把握してるつもり。教授にも俺なりの解釈で伝えてある」
そうか。
佐山さんは全てわかってるんだ。
そういえば手紙……。
どこやったっけ。