遙か彼方



「一応俺が知ってることは伝えてあるよ」

佐山さんはどこまで知っているんだろう。

「……お母さん、のことは?」

さっきの刺々しい声が嘘のように、今度は弱く呟くように聞いた。

赤信号で止まると佐山さんが私の様子を伺うように見つめてくる。

「…………」

「…………」

私はそんな視線から逃げるように俯いた。

こんな情けない顔見られたくない。



信号が青に変わると再び車は走り出す。


「悪いとは思ったけど、美桜ちゃん宛の手紙読ませて貰ったよ。後、学校からの電話でケータイが繋がらないってのは聞いてたし、だから状況は把握してるつもり。教授にも俺なりの解釈で伝えてある」


そうか。

佐山さんは全てわかってるんだ。


そういえば手紙……。

どこやったっけ。








< 72 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop