遙か彼方
嗚咽を洩らす私を佐山さんがチラチラと気にしている。
だけど涙は止まらなかった。
「もう寮に着くけど、どうする?もう少しドライブでもしようか?」
佐山さんは私に気を使って言ってくれている。
それはわかってる。
だけど、私には待っている人が居る。
「大丈夫、です」
「…じゃあ寮に帰るね」
「すみません…」
それから何だかお互い無言だった。
車内には知らない洋楽と、私が時々鼻水を啜る音だけが響く。
全ては私から聞いたこと。
軽い気持ちで聞いてしまった自分が悪い。
お父さんは家を捨てた。
そんなことわかっていたのに。
お父さんの心の隅にも、家族はいない。