遙か彼方
告白
私は佐山さんの車が角を曲がって見えなくなるのを確認すると、手に荷物を持ったまま図書館に向かった。
空は薄暗く、昨日の雨のせいか少し涼しい。
お盆も終われば、夏は終わる。
雨が降って、気温が下がって、秋になる。
蒸し暑いだけの夏でも終わってしまうと思うと何故か寂しい。
そんなことを思うのは四季の中で夏だけだ。
空を見上げると流れる雲の隙間に丸い月が見えた。
「満月かな……」
佐山さんの言いたいことは本当はわかっている。
どんなに辛くても、私は佐山さんにそれを伝えたことがない。
お母さんに会いたい。
寮なんか居たくない。
家に帰りたい。
平凡だったあの頃に戻りたい。
弱音ならいくらでも出てくる。
でもそれを佐山さんに言ったところで何も変わらない。
ならいい。
困らせるだけなら言わない。
お父さんにも伝わってほしくないし。
私が我慢すればいいだけの話。