遙か彼方



だけど、扉には鍵が掛かっていて開かなかった。

「あ、ごめん。開けとけば良かったね」

彼は私の前に出て、ポケットから鍵を出して鍵穴に差し込んだ。

その鍵には赤くて細いリボンが結んであった。



何だろう、この恥ずかしさは。

今私、凄くダサくなかった?

鍵開けといてよ……。



「開いたよ。行こう」

そんな私に気付かず、彼は図書館に入っていく。

私は入口で固まっていた。


「美桜?」

「葵のバカ……」

「え?」

俯いて小さく呟いた声は彼には聞き取れなかったらしく、顔を近付けてくる。

「もう一回言って?」

聞こえないように言ったのに何でもう一回言わないといけないんだ。

「美桜?どうした?」

何かもうヤケになっていた。

あほらしいのはわかっているけど、口をきいてなんかやらない。






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