遙か彼方



暫く黙っていると顔が離れていく。

呆れられたのかも…。


すると俯いていた私の頭に掌が乗った。

「何拗ねてるの?」

「す、拗ねてなんかない…」

「美桜」


これは俗に言う“よしよし”だろうか。

この行動に世の中の女の子はキュンとするらしいけど。

どうやら私も世の中の女の子の一人らしい。

胸の真ん中がキュンとする。


駄目だ。

こんな感情を彼に抱いたらいけない。


だって彼は宇宙人。

いずれは自分の星に帰ってしまう。

居なくなってしまう存在。


昼間変な想像をしたからいけないんだ。



「行くよ」

頭に乗っていた手が私の手を取って、薄暗い図書館をズンズン進んで行く。


さっきと立場が逆転していた。

……でもさっきと違うことは、手を繋いでいるということ。

私の強引に腕を掴んだのとは違う。

掌の温もりを感じる。






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