遙か彼方



綺麗に片付いた寝室を、私は荒らしまくった。


クローゼットの奥の奥まで引っ掻き回した。

布団は全てベッドからひっぺがした。



決して気が狂った訳ではない。

正気だ。



お母さんの手掛かりが欲しかった。

どこに居るのか知りたかった。




気付けば日が暮れていた。

外は太陽が沈んでいる。

部屋の中も薄暗く、見えにくくなっていた。


それだけ探したのに、手掛かりは一つも出ては来なかった……。




ふと思う。

私、制服を着たまま何やってるんだろう。

でも着替えるのも面倒。



何かもう動きたくない。

…何かもうどうでもいい。

……何もかもがどうでもいい。




お母さんの、馬鹿……。




────その夜は散らかり放題の部屋で、お父さんとお母さんのダブルベッドに横たわった。

何もないベッドの上に掛け布団だけを持ってきて、制服のまま頭まで被って寝た。



布団の中はお母さんの匂いがした。


……お父さんの匂いはしなかった。







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