遙か彼方



手を繋いでいるという状況に更にキュンとした。


というか、キュンどころじゃない。

私の心臓はドクンドクンいっている。


駄目だ。

駄目だ、駄目だ。

静まれ心臓。


「美桜?」

その声に一段と大きく心臓が鳴る。


「……て」

「え?」

「離して」

「あ、ごめん…」


私は手にしか視線がいっていなかった。

その時彼の顔が哀しい表情をしていたことに気付かなかった。



それに気付いたのは、私がいくら俯いてゆっくり歩いていようとも『美桜?』と振り向いてくれなくなったから。

それでも歩く速さは合わせてくれている。

後ろに目が付いているかのように、彼が先を行ってしまうことはなかった。



私彼に甘えているのかな。

彼が私を見捨てる訳がないと心のどこかで思っている。

あんな秘密を打ち明けてくれたからか。

それとも私を支えると言った彼の言葉からか。


だからって私がわがままを言っていいということではない。






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