遙か彼方
図書館の一番奥に着くと彼は窓を開けた。
夜の風が入ってくる。
その風は何だかこの気まずい空気を吹き飛ばしてくれたように感じた。
「そこ、座ってもいい?」
私は窓際を指差した。
「いいよ」
彼も快く承諾してくれる。
昨日は座れなかったこの場所。
彼が座るのを確認すると、私も続いて座った。
心なし彼の方を向いて座った。
手を伸ばせばすぐにでも届くこの距離。
この距離に嬉しく思った。
そうして見つめていると彼と目が合う。
そんなことにも心臓が跳ねた。
「美桜」
「ん?」
「もしかして泣いた?」
「………」
「目が少し腫れてる」
「うん…。ちょっと…」
「どうしたの?」
今なら言えそう。
私の抱えている思い。