遙か彼方
じっと見つめれば、彼の金色の瞳も真剣に見つめてくる。
「途中で泣いて話せなくなるかも…」
「いいよ」
「上手に話せないかも…」
「大丈夫」
「人に話すの初めてで…」
そこまで言うと、彼は体をこちらに向けて私のガチガチになった両手を優しく包んだ。
両手を掴んで下から見上げる彼は少し微笑んだ。
「大丈夫。話せることだけでいい。泣いちゃってもいい。僕が受け止めるから」
「うん」
私は話した。
誕生日の次の日、お母さんがいなくなったこと。
お父さんが何をしているのかもわからないこと。
家での生活が無理になって大学の寮に住んでいること。
その寮からも逃げて図書館にいること。
彼は静かに時折相づちを打って聞いてくれた。
私はやっぱり話の序盤で泣いてしまった。
でも全てを伝えたくて、途切れ途切れに話した。
話の順番はめちゃくちゃで、ちゃんと伝わっているかはわからないけど。
彼は真剣に聞いてくれた。