遙か彼方



「さっき、佐山さんにお父さんのことを聞いた」

「うん」

「お父さんは家族がどうなったっていいみたい。私がこんな思いしていることもきっと知らない」

「……でも、寮に入れてくれたのはお父さんでしょ?」

「それももうわからない。佐山さんがそうしてくれたのかも…」

「でも……」


そんなにお父さんを庇おうとしないで。

いくら庇う言葉を探したところで出てはこないんだから。


「いいよ。大丈夫」

「何が?何が大丈夫?」

俯いた私を金色の瞳が強く捕らえる。

「え……」

「お父さんから逃げたら駄目だよ。今美桜が頼れるたった一人の家族でしょ?」

「………」

「家族を頼らないで誰を頼るの?」


そんなこと言ったって、お父さんは私なんかどうでもよくて……。


「お父さんは美桜に会ってないんでしょ。美桜が今辛いことを伝えないと向こうだってわからないよ」

「………」

「お父さんが美桜を放っておいてるのもあるかもしれないけど、美桜がお父さんを避けてるんだよ」

「………」

私がお父さんを、避けてる……。






< 83 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop