遙か彼方
「さっき、佐山さんにお父さんのことを聞いた」
「うん」
「お父さんは家族がどうなったっていいみたい。私がこんな思いしていることもきっと知らない」
「……でも、寮に入れてくれたのはお父さんでしょ?」
「それももうわからない。佐山さんがそうしてくれたのかも…」
「でも……」
そんなにお父さんを庇おうとしないで。
いくら庇う言葉を探したところで出てはこないんだから。
「いいよ。大丈夫」
「何が?何が大丈夫?」
俯いた私を金色の瞳が強く捕らえる。
「え……」
「お父さんから逃げたら駄目だよ。今美桜が頼れるたった一人の家族でしょ?」
「………」
「家族を頼らないで誰を頼るの?」
そんなこと言ったって、お父さんは私なんかどうでもよくて……。
「お父さんは美桜に会ってないんでしょ。美桜が今辛いことを伝えないと向こうだってわからないよ」
「………」
「お父さんが美桜を放っておいてるのもあるかもしれないけど、美桜がお父さんを避けてるんだよ」
「………」
私がお父さんを、避けてる……。