遙か彼方



言われてみればそうかもしれない。

佐山さんに何も言えないのも、お父さんに伝わらないようにって。


それは何の為?

私がお父さんを避ける理由は何?


悔しいから。

放っておかれて悔しいから。

お父さんに私が辛いことなんて言いたくなかった。

変な意地だった。


お父さんが何してるのかわからないのだって、佐山さんに聞けばすぐわかるのに聞かなかった。

毎日同じ敷地内にいるのに、会いに行こうともしなかった。


私がお父さんを避けてたからだ。



「……そうだね」

「美桜。一度お父さんに会っておいで」

「え…」

「会った方がいい」

「葵も一緒に来てくれる?」

「ごめんね…。僕は行けない」

「そうだよね……」

いくら大学の中でも駄目なんだ。

「明日の夕方、ここで待ってるから」

「明日?」

「そう。明日会いに行っておいで」

「……わかった」

彼の、私の手を掴む力が一層強くなる。

「待ってるから」






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