遙か彼方
寮に戻ってきた私は置きっぱなしのケータイを手に取った。
お父さんの居る所なんて知らないから、佐山さんを頼るしかない。
今までどれだけ佐山さんに頼っていいと言われても、一緒に買い物に行く以外頼らなかった。
だから緊張する。
いきなり何だ!?と思われるかも。
どうしよう。
でも彼と約束したし……。
佐山さんの電話番号を開いたまま、ケータイの画面を数秒見つめた。
“頑張ってね”
うん。私、頑張るよ。
決心して通話ボタンを押した。
無機質な機械音が耳に届く。
『美桜ちゃん?』
「あっもしもし、こんばんは。今大丈夫ですか?」
電話をかけたのはいいけど、何でだろう。
私テンパってる。
『大丈夫だけど。どうしたの、何かあった?』
「急にごめんなさい。えっと明日空いてる時間ありますか?」
『明日?まぁ、あるよ?』
「えっと明日私、お父さ…、父に会いに行こうかと思ってて」
『え?』