遙か彼方
「えっと、父の居場所を教えて欲しいなと思って」
『あー…。うん、いいよ。』
微妙な反応。
初めて佐山さんを頼ったのに。
あんまり乗り気じゃなさそう。
『美桜ちゃん。さっきのことがあったのに、お父さんと会ったりして大丈夫?』
そういえば、さっき私佐山さんの前で泣いたんだった。
だからこんな微妙な反応なのか。
「大丈夫です。逃げていたら駄目なんだって、分かったから」
『強いんだね』
「全然。弱いから今こんな生活してる訳だし」
何もかもがどうでもよくなって、世間から逃げている。
彼に言われたなんてのは、単にきっかけに過ぎないのかもしれない。
身内からも逃げてどうするんだ。
『充分強いよ、美桜ちゃんは』
そこまで言われると照れてしまう。
自分を強いとは思わないけれど。
『明日、多分2時頃には行けると思うから待ってて』
「あ、はい」
『じゃあ、おやすみ』
「おやすみなさい」