遙か彼方
大学の敷地内を歩いていくと、佐山さんは図書館のすぐ近くの建物に入った。
こんなに近くにお父さんが居るの?
静かな建物内に二人分の足音が響く。
人の気配がまるでしない。
廊下を隅まで歩くと今度は階段をひたすら上った。
寮と図書館の往復しかしていないせいか、運動不足の体に階段はきつい。
二階に上っただけで動悸がする。
だけど佐山さんは止まることなく三階、四階、と上っていく。
息切れがする。
お父さんへの道程がこんなにもハードだとは思わなかった。
クーラーの効いてない階段は正に蒸し風呂状態で、汗が尋常じゃない程吹き出てくる。
「大丈夫?」
佐山さんが後ろを振り向いて、心配してくれた。
「ちょ、ちょっと休憩を…」
このままじゃ私、溶けて無くなりそうだ。