遙か彼方
廊下に出ると数メートル進んだ扉の前で足を止める。
「心の準備はいい?」
「……はい」
佐山さんが扉に手を掛けた────…。
「ま、待って」
「なに!?」
扉を開きかけたところで待ったをかけたら、佐山さんが驚いた顔で振り向いた。
準備良くない。
会う前に確認したいことがあったんだ。
「父には言ってあるんですか?」
昨日の今日で来ちゃったし、急のことだから。
お父さんに私が来ること言ってあるのかな。
言ってなくて追い返されたらどうしよう。
「ああー。大丈夫、言ってあるよ」
「良かった。ありがとうございます」
「ここまで来て居ないなんてことにならないようにね。あとは?もうない?」
あとは…。
ないかな。
「大丈夫。行きましょう」
それを聞いた佐山さんは一度頷いて扉に向き直った。
そして再び手を掛けて、今後こそ扉を開けた────。