遙か彼方



足早にもと来た階段を降りた。

それに佐山さんも付いてくる。


早く図書館に行こう。

彼がもう来ているかもしれない。

今あった出来事を聞いて貰おう。



「美桜ちゃん!ちょっと待って!」

図書館に行くことしか頭にない私の腕を佐山さんが掴んだ。

「…何ですか?」

それは調度1階と2階の間の踊り場で、佐山さんが私の腕を掴んで立ち止まるから私も動けなくなった。


「美桜ちゃん…、大丈夫?」

「何がですか?大丈夫ですよ」

「本当に?」

「大丈夫ですってば!」

何度も同じことを訊いてくることに何だかイラッとして、佐山さんの手を振り払った。

「……ごめん」

佐山さんの顔が歪んだ。

それは苦しそうな哀しそうな、なんとも言えない表情。

その表情で私を見つめる。


その視線に堪えられなくなった私は、やっぱり階段を駆け降りるしかなかった。


後ろから付いてくる足音は、もう聞こえない…。






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