あのころ、グラフィティ
そのとき、
店から声がする。


「ただいまぁ。」


誰かが帰ってきたんだ。


「ヤバ!?ねぇちゃん、帰ってきた!...マコちん、とにかくあたしに話しあわして!あたしがフォローするから!...あ、そうだ。うちのねぇちゃんのことは桜ねぇって呼んでたから。いい!?『久しぶり!桜ねぇ』って言うんだよ。」


勢いに圧倒されて、返事をしてしまった。居間のふすまが開く。


「お、お帰り。ねぇちゃん!」

「ただいまー。」


すぐ、僕に気づいた。

「......誰?まさか彼氏!?」

「違う違う。誰だと思う!?...マコちんだよ~!」

「...マコちんって、あのマコ!?」


珠子さんは、僕をチラッと見て、『言って』と口をパクパクした。


「...久しぶり、桜ねぇ?」

「久しぶりだねぇ。...なんかかっこよくなったじゃん。」

「そ、そうかな...」

「なにキョドってんの?」

「ま、まだ昔の感じがつかめないんだよね!?ね!?マコちん!」


僕はうなづいた。


「ふーん...んで、なんで戻ってきたの?里帰り?」

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