あのころ、グラフィティ
「あ、はい。」

「やだ!こんなおっきくなって!全然、わかんなかったじゃない!...でも、そういえばマコくんだわ。面影あるある!ほんと見ないうちに変わったわねー。...あ、ほら、早くあがって!...悠太もこっち来て。」


僕は靴を揃えて、家にあがった。

悠太という男の子は、僕の隣に靴を置いて、走っていってしまった。






「いろいろ大変だったでしょ?でもここに来てからは、なーんにも心配しなくていいから。ゆっくり思い出して。」

「...はい。」

「優子はまだ、目醒まさないのよね。...あたしも見舞いにも行けなくて、...うちのお母さんが付き添ってくれるから、マコくんは安心してね。」

「...はい。」

「あ、まだあたしのこと知らなかったね。優子の姉の多香子です。...これからよろしくね。」

「よろ、よろしくお願いします。」

「人の記憶って強いから、きっと早く思い出すよ。...あ、そうだ。写真!......あのね、マコくんが東京行った日に、撮った写真があるのよ。ずっと渡せなくって。」


多香子さんは棚の引き出しを探し始めた。


「あったあった!!」


僕に写真を見せた。

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