あのころ、グラフィティ
さっき通った道とは別の道を歩く。


この道は、商店街が並んでいて、人通りも多かった。


少し歩くと、八百屋から元気な声がして、つい足を止めてしまった。


『八百花』。この八百屋の名前だ。



「珠ちゃん、いつも悪いねぇ。」

「いいの、いいの!父ちゃんには内緒だかんね。」

「わかってるよ。じゃぁ、また。」

「はーい!!」



りんごをどっさり買った、おばさんが八百屋から出てくる。


「いっらっしゃい!」


さっきの元気がいい女の子が僕を見ている。


「今日はね、キャベツとりんごがお買い得!あ、このレタスは朝、採れたやつだからシャキシャキしてうまいよ。オレンジも、」


「あの、僕は...」

「...てか、見かけない人だね。どっから来たの?」

「いや、えっと~」

「......ん?んんん!?」


近寄ってくる。


「誰かに似てるような...」


顔が近い。


「えっと、見間違いじゃ、、」


じっと僕を見てきて、急に驚いた顔をした。

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