あのころ、グラフィティ
でも、、ゆさじは違った。


昔からできのいい貫は、近所の人たちからよくほめられてた。
『挨拶をちゃんとして偉い。』とか、
『家の手伝いをして、立派な子』だとか。
その反対にオレを見れば、
『貫を見習え』だの、『貫はできるのに、なんで福はできないんだ』とか。
...周りはみーんな。


けど、ゆさじが言ってくれた。



『おまえのいいとこいっぱい知ってるよ。明るいし、面白いし、逃げ足早いし。』

『そんなん自慢になんねーよ。明るいのだったら珠子がいるし、、面白いんだったら、ゆさじの方がオレよりもっと面白い。...逃げ足は...必要ないもん。』

『バカだねぇ。...貫と比べるなよ。おまえはおまえだ。......言っとくけど、オレはおまえといて楽しいよ。...福は人を楽しませてくれんじゃん。、、みんな助かってる、口で言わないだけで。だから、もう言うな。』


【人を楽しませてくれる。】


この言葉で、オレは貫と比べなくなった。自分は自分だって...



ゆさじがいるまでは。



ゆさじが死んでから、またオレはあいつと自分を比べるようになった。


あの言葉を忘れてしまっていた。

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