あのころ、グラフィティ
就職ガイダンスが終わり、自分の教室へと戻る。
その途中貫のクラスを通ると、そこに貫と貫の担任がなにやら話してるではないか。
オレは隠れて耳をダンボにして、聞いた。
「おまえの頭なら、いい大学だってはいれるぞ。...本当は大学行きたいんだろ。」
「大学は行きたいですけど...」
「ならなんで迷う必要があるんだよー。」
「...父さんの後を継ごうと思ってるんです。」
オヤジの後!?
寿司屋を継ぐってこと!?
「多分、誰もいないんです。後継ぎ。」
「陣内福がいるだろ?」
「あいつは...自由が好きだから、父さんの後は継がないと思うんです。」
「でもなぁ、もったいないぞ。」
「いいんです、別に。あの町から『カンプク』がなくなる方がツラいし。オレ、父さんの握る寿司が好きなんです。」
「...そうか。でもな、行ける道があるのに、無駄にするのもよくない。...まだ、時間もあるし、じっくり考えろ。」
「...はい。」
知らなかった。
貫があんなこと考えてたなんて...
てっきり大学に行くもんだと思ってたよ。
なんか悩んでしまった。