あのころ、グラフィティ
彼女は両手を頬にあてて、ムンクの叫びみたいな表情をした。


「ゆさじのことも...?」


今度は僕の顔を伺った。


「...知りません。」


悲しい表情をした後、ほっと息をもらした。


「なんかドラマみたい。すごいね、すごい。マコちん!」

「すごい、、かな。」

「でもマコちん。」


急に真面目な顔になった。


「このことは秘密にしておいて。記憶喪失のことみんなには言わないでほしいんだ。」

「なんで?」

「なんでも。バレたら大変なことになるかも!...殴られたり、町から追い出されたり。」

「えっ...そんなことまで?」

「そうだよ、危ないの。」


それはないだろ。と、思いつつもリアクションをとってみる。


「今んとこ、マコちんが記憶喪失だって知ってるの、誰と誰!?」

「...一応、お世話になるから永瀬の人には伝えてあるけど...」

「おっけぇ、わかった。あとの人は知らないんだよね。」

「多分。誰も言ってなければ。」

「言わない言わない。マコちん、あたしにまかして!」


手を握られる。


まかしてって、何を?
さっぱりわからん。

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