【短編】The last bet
顔のそっくりな双子の奏多と詩歩は俺の姿を見つけると、教室からパタパタと足音を響かせて飛び出して話し掛けてきた。
急に飛び出していったことを先生に注意され、ごめんなさいと反省する姿を眺める。
まったく同じ動作をする二人が、素直な二人が、無性に可愛いと思ってしまう。
「おこられちゃったね」
「きをつけなくちゃね」
二人は顔を見合わせて笑い、靴を取り出して素早く履き、そして駆け出した。
先生への挨拶も途中に、慌てて追い掛ける。
いつの間にこんなに足が早くなったのか。
いつの間にこんなに背が伸びていたのか。
以前、一人では開けられなかった門をいとも簡単に開け、先を行く子どもたち。
久しぶりに、全力疾走をさせられた。
「おそいよー」
「まってたよー」
ったく。
あどけない表情で見られると、怒る気さえ失せてしまう。
当の本人たちは悪怯れた様子もなく、俺が追い付いたことを確認すると、二人仲良く手を繋いで歩きだした。
来た道を、三人で歩く。
一歩一歩、別れの時が近づく。
そう。
これが最後……なんだと思う。
「ねぇ、おかあさんは?」
「おとうさん、しごとは?」