ラブランク
私は一気に半分程飲む。

「美味しい〜!」

よく冷えたビールは私を

満たしてくれる。欲しか

った物が手に入った、そ

んな達成感に似ている。

「今日はすいません。俺が無理に菜摘さんにお願いしたんです。菜摘さんを責めないで下さいね。」

責めるわよ、メールでお

もいっきり怒っちゃう。

「この前、ちゃんと伝えたらよかったのに曖昧(あいまい)にしちゃって…瑞紀さんメールも全然くれないし…。」

私は彼の方を見ずタバコ

に火を付ける。

「何、飲んでるの?」

「烏龍茶。店が休みの日は飲まない事にしてて…。」

「それはいい心掛けね。」

何だかレイは緊張してい

るようだ。いつもと感じ

が違う。

「俺、マジなんです。俺の恋人になって下さい!」

菜摘はいつの間にかそこ

にいなかった。後ろのボ

ックス席から彼女の笑い

声が聞こえた。

私は聞こえないフリをし

て返事をしない。

「俺じゃ対象外ですか…?」

若いからだろうか…いき

なりそんな事言うなんて

−−−。

そんな話し、聞きたくな

かったよ。

「本気で言ってるの?私達会ったばかりなのに。」

大人を装って言ったが、

心臓が高鳴る。

「俺、ずっと瑞紀さんに憧れていたんです。ヒデさんと野球の応援に来てくれてた時から!でも突然ヒデさんも瑞紀さんも来なくなって…。この前店に来た時、すぐ分かりました。瑞紀さんだって!俺達、出会う運命だって!」

レイは一気にそう言った



運命なんて…若い彼が羨

ましい。私の鼓動はどん

どん早くなる。
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