ラブランク
私は菜摘から目を反らし

た。

「…そうかも知れない。」

その一言を告げるのに、

長い時間がかかったよう

な気がする。そう言いた

くても、ずっと自分の中

にしまい込んでいた。

「…そんな気がしてた。瑞紀は、今でも引きずっているんだろう、って。」

菜摘はため息混じりに、

そう言った。

「分かってるんだ…忘れなきゃって。でも、忘れなれないんだ…いつも私の心の中にヒデがいて……。」

私は涙をこらえる事がで

きず、手で拭った。

「レイが…会ったんだって。ヒデに…。」

「嘘っ!会ったって、戻って来てるの?えっ…。」

菜摘は私を見つめる。

「そうみたい…。それで、会って話してみたら、って…。」

「……。」

菜摘は考え込んでいる。

私も何も言葉が出ないで

いた。

「こんばんは〜。」

レイの声がした。彼はス

ーツではなく、ジーンズ

姿で現れた。
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