ラブランク
鼓動がどんどん、どんど

ん早くなる…。

「いらっしゃいませ〜。」

ボックス席に、菜摘と座

っていたヒデも、こっち

を向く。彼が私を見つめ

る。もう、お互い目を離

せないでいた……。

菜摘はヒデに声を掛け、

席を立つ。レイはヒデに

軽く頭を下げ、私の方を

振り返る事なく真っ直ぐ

カウンターに向かう。

私は彼から視線を外す事

が出来ないまま、彼の前

まで進んだ。

ヒデ…逢いたかった…。

彼は、立ち上がり、

「……久し振り…だね。座ったら……。」

と、隣に手を向けた。

ずっとずっと、聞きたか

った声。今、私だけに掛

けられた声。

私は涙を堪(こら)える



菜摘が優しく見守る−。

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