王龍
「楓ぇーっ」


そう言ってうちは、楓に抱きついた


「…っ………会いたか…った………」


「…うん。………俺も」


「…ぐすっ」


「…姫………泣いてんの?」


「…当たり前やん」


「ははっ変わんないなぁ、姫は。…………でな、俺がここに来た理由を話さなあかんねん」


「…ん」


「……………姫。お前、好きな奴おんねんやろ?」


「…はぁ?そんなん…」


「ただ、過去に…。俺にとらわれてるから、気付かへんだけなんや」


「………」


「ええ加減…幸せになってもええねんで?」


「…楓?………うち、まだ楓の事が………」


「姫」


「…はいっ!」


「…………………………後で後悔しても遅いねんで?」


「………後悔、しないもん」


「未来は誰にもわからへん。けどな、自分のことはわかっとるはずや」


「………」


「姫は、自分で進むべき道を自分で切り開ける。やから、本当はどうしたいか、わかってるはずや。…なぁ?」


「…ん」


うちがそう言うと、楓はふわっと笑い


「なら、意地はらんで進むべき道を進め。…ええな?」


「…う、ん」


「ほな、そろそろさよならや」





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