王龍
キキーッ


「ほらついたでー」


学校から少し離れた人通りの少ない場所に車が止まる


「ほな、頑張ってきー」


「…ありがとう。ほな蓮、行くで」


「はいっ」


蓮はうちの舎弟


「じゃぁまたね、蓮」


うちは別にどうでもええねんけど、蓮が


「俺がついてまわったら、正体バレるかもしれませんので」


とかなんとか言いだしたから学校では、一緒にいない


…別に何か言われたら


「うちも王龍に入ってる」


って言ったらええだけやのに…


ふと影がさして上を見上げると、大きな雲が浮かんでいた


「…"あの頃"と変わってへんなぁ…」


変わったのは…うちだけ


「"あの頃"のうちは…溢れる涙を止めるために、空を仰いでたんやなぁ…」


うちの気持ちに比例するように降っていた雨…


今はもう、降っていない





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