王龍
何時間も、何時間も手術が終わるのを待った


早く、楓の顔を見たい


また、うちに笑いかけてほしい


声も聞きたい


良くなったら、デートに行きたい


そんなことを思いながら、何時間も、何時間も待った


ガチャ………


手術室のドアが開き、先生がでてきた


「…楓は…?」


「…申し訳ありません。0時34分、和田 楓さん、他界しました………」


「…………へ?」


だって…数時間前までは、いつも通り笑ってたんやで?


たまに、寒いオヤジギャグとか言ったりして、元気やったんやで?


「…あはは…そんな嘘…やめてくださいよ…」


…違う


これは、嘘やない


だって先生の目…本気やもん


これは、夢でもない


頬に伝う涙は冷たいし、震えを止めようと、押さえ付けてるところは………凄く痛いもん


あぁ…心臓が痛い


すっごく痛い


ねぇ楓………


………うち、もういやや


楓がおらん世界におるの………いやや





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