王龍
「…君はもしかして…神崎 凪瑠…さん?」


「そうですけど?」


「…これ」


そう言われて差し出されたのは、宛先名に"神崎凪瑠様"と書いてある一通の手紙だった


「…これは…?」


「楓くんの持ち物に入っていたんだよ」


「…楓の…?」


それきり、お互い何も話さなかった


うちは、その手紙をくいいるように見つめていて、気付いた時には、先生はおらんかった


パサッ


思い切って、手紙の封を開けてみる


パラ………


出てきたのは、一枚の紙だった


────────────────────


姫へ


…なんで今お前、この手紙見てるん?


…なんで今俺、お前の隣おらへんのや?


俺、お前を守るって誓ったのに、最後まで守れんで…ごめんな


…なんか、悔しいわ


今これを書いてる俺は生きてるけど、もし今死んだら…って考えると、めっちゃ悔しいねん


…なんか、余計に落ち込ませてもうたらごめんな


あんな、姫にお願いがあんねん


俺が居らん今、王龍には総長が居らへん


…総長が居らんかったら、ガタガタになってまう


やけな、姫


お前に総長を任せたい


きっと苦しいと思う


けど、俺は姫がいい





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