王龍
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「…凪瑠。もぅ。こんなに泥だらけになって」


「ごめんなしゃい、まま。でも、なるは悪くないもん。まーくんが悪いんだもん」


「こら、凪瑠。人のせいにしないの。…ほら、早く脱いで。洗濯しなきゃだから」


「…はぁーい」


まだ、幼稚園に通っていた頃


うちは、一般家庭に生まれ、普通の生活をしていた


裕福ではなかったが、貧乏でもない、本当に一般の家庭


父は、近くの大きなビルに勤めており、母はその会社の受付嬢をしていた


…つまり、共働きだ


お互い、その仕事が好きだったらしく、結婚しても、うちが生まれても仕事をやめることはなかった


それでよかった


そのおかげで、うちは幼稚園から帰った後、友達と遊んだりして、帰るのは夕方のときもあった


その頃にはもう母も帰っていて


「おかえり、凪瑠」


「ただいま、まま」


こんな感じで、毎日を過ごしていた


寂しいとか、そういう気持ちはなかった


だって、友達がいるし


今思えば、うちは幼稚園の友達がいたからこそ、寂しくなかったんだと思う





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