幸せのハードル
幸せのハードル



空が次第に赤くなりつつあった。

晩御飯の材料を買い、今は二人でその帰路を辿っていた。


ふと思いつき、つぶやく。



「これ、
 続いてほしいよねずっと。」


「え、え?
 曖昧すぎて全く分からない。」


「こういう関係だよ。
 口にしたら脆いんだけど、なんかいいじゃん。なんでいつまでも続かないのかな。」



夕日に包まれてふたり手をつなぐ。まさに「青春」という単語がピッタリで、なにかむずかゆくなった。



「欲があるからじゃない?」


「ええ…違う。なんか。」



疑問を持つくせ考え込むのが苦手なので、とくに追求はしなかった。
すこしの沈黙のあと、彼は言う。



「僕らもいつかは離れるのだろうか」


チラリと夕日をみながらそう呟いた。


「うん、きっと。
 わたしたちには欲があるから。」


「…そんなもんかなあ…」


「そう言ったのはあなただよ」


「うん。でも例外だってあるかもしれない」


「うまいこといかないんだよ。世の中は。」



今ここで一緒に死ねば
一番幸せなのかもしれない。




街の中は、二度と逢えない人たちで溢れていた。

漠然と取り残された
気分になる。


この空にも
もう逢えないのだと悟った。






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