幸せのハードル


寂しさの中。

柄じゃないからと、伝えられないでいる言葉が山ほどある。




「幸せな別れ方をしたい」


「うん、」


「というか、別れるつもりもないのにね」


「『まだ』ね。」


「な、なんてことを…」



私たちは静かに笑った。


(だけれど、出会いは別れのためにある運命じゃないから。)








二人でひとつの生ぬるい缶珈琲が、とても、とても優しくて


すると唐突に何もかもが
愛しくなった。


堪らなく。






「わたしは、あなたの事が好きだと思う。」


「え、すごいね」


「なにが?」


「同じこと考えてた。」





夕日は世界中を染めてしまいそうなほど、じわりじわりと滲んでゆく。

もう少ししたら
地球は橙に沈むのだ。





「あああ、ばかみたい。
 青春だよこれは 」


「これほど幸せなものはない。笑われたら笑ってやる。」







愛を決定付ける何かなんて要らない。


形にならない幸せほど、
幸せなものはないのだ。










おわり


< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

夏の青 ・
/著

総文字数/2,525

青春・友情8ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop