世の中の



―古い洋館にて


「見ろよ。これ」

茶髪の男、仁は隣にいた唯と新一に新聞の記事を見せた。


昼に路地裏で少女二人が喧嘩をした、という内容だった。

一人の少女がもう一人の少女をナイフで刺し、逃亡。その後、目撃者の証言で逃亡した少女も警察に事情を説明された。
と新聞に書いてあった。

「それがどうしたの?」

ファーストフードで買ったジュースを飲みながら大して興味なさそうに唯が仁に聞いた。

「この少女…あ、刺した方な、知り合いなんだよ」

「ふーん。出会い系で知り合ったの?」

「ばかっ!!なんでそうなるんだよ!!!」


唯はジュースを勢いよくテーブルに置き、


「だって!!いつもいつも携帯とにらめっこ!!お母さんもううんざりよっ!!」


「…いつからおまえ俺の母さんになった?つーかなおまえ…俺は出会い系サイトやったことねーんだよ!!!」


「…で、その子がどーしたの?」

怒鳴る仁をなだめるように、新一が割って入ってきた


「お、そうだった」

仁は小さく咳払いをし

「問題起こしたから、親に家から追い出されたんだとよ」

「うわっ可哀想」

棒読みで言う唯を無視し、仁は続ける

「泊まる場所もないし、ホテルに泊まれる金もねーんだとよ。だからさ、唯。おまえん家泊まらせてくれね?一泊だけでいいから」


「うん、いいよ」


「サンキュー」

「話終了?だったら今から寝るから」

そう言って、ソファに横になり、わずか五秒で寝息が聞こえ始めた

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