世の中の
「あなたは?」

早雪は翔の方を見る

「え…えっと、山本翔です」

聞かれたので慌てて応えたためか、声が上ずる。隣では友也が声を凝らして笑っていた

早雪もくすくすと上品に笑ったあと

「私が年上だからって緊張しなくても大丈夫ですわ」

「え?でも、一緒の学年ですよね?」

翔が怪訝そうな顔をしたからか、早雪は慌てて補足した

「私、留年しましたの。出席日数が足らなかったので」

「…病弱なんですか?」

早雪は首を横に振り、意味ありげにニコッと笑ったあと、「それではこれで」と言い、翔たちから離れていった
翔はずっと、早雪の後ろ姿を見つめる

「惚れちゃダメだよ」
冷めた声でぽけっとしてる翔に話かける
翔は友也に視線を移らせて、顔を赤らめて慌てて否定した

「俺は、別に…」

動揺していて、すぐに惚れていると気づくが、友也はそれを茶化さず未だ冷静に言う

「彼女、裏で何かやってるらしいから」

「か…彼女が?」

「うん」

そう言って、早雪とは逆方向に歩き出す
翔は早雪が行った方向を見た。早雪の姿はもうないが、友也に呼ばれるまでずっと見つめていた。


< 38 / 59 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop