世の中の



翔と友也も別荘に向かっていた。

「えっ!?今日犯人が出るの?」


「うん、亦部夫妻がいるし、世の中に嫌気さしてる犯人なら金持ち刺すと思ったから」

「短絡的だね…」

「犯人が短絡的思考する人だからね」

「…?どういうこと?」


友也はそれには答えなかった。
ただ、ニコリと笑っただけだった。


「……」

そんな友也の姿を見つめながら、翔はずっと引っ掛かっていたことがあった。

―どうして友也は、危険な目に遇うのにも関わらず、犯人を捕まえようとするのだろう。

最初の頃は、自分と同じで何か日常とは違い、何か手の汗握る場面に出会いたかった、と思ったが、よくよく考えると友也はそんな理由で、行動するとは思わなかった。

命の危機なら友也はいつもあっている。




友也には、親がいない。
本人は旅に出掛けてるとか言っているが、きっと元からいないのだと思う。


友也と僕は幼なじみ、小さいときから一緒だった。
それなのに僕は一度だって両親に会っていない

普通こんな小さい子を残し、旅に出掛けるか?

旅に出掛けるとしても、友也を連れていくはずだ。


食料などは自給自足。
小さいときは、近所の商店街で働きをし、金を貰っていた。

島民たちは、何も言わなかった。警察も、役所の人らも。

たぶん、事情を知ってるからだ。

うん、そうに違いない。


でも、事情を島民知ってるということは、悪党の恰好の餌食だった。

友也の家に泥棒など入り、何度も出くわしたことがあるらしい。
小さな子どもだからって、みんな油断してるから。

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